中古マンションの構造は買う前に確認|壁式・床・梁でリノベの自由度が見える
中古マンションの内見は、つい「明るい」「雰囲気がいい」「水回りがきれい」に目が行きがちです。
でも、住んでから後悔が出やすいのは、あとから変えにくい“見えない部分”。
その代表が 構造(壁式/ラーメン) と 床(直床/二重床)、そして 梁(下がり天井) です。ここを押さえるだけで、
- 「その間取り変更、そもそも可能?」
- 「キッチン移動したら床が上がる?」
- 「工事費が跳ねやすいポイントはどこ?」
が、買う前にかなり見えてきます。
この記事では、難しい建築の勉強ではなく、購入前に“判断に使える”構造の見方を、実例ベースでまとめます。
※最終判断は 物件ごとの図面・現地・管理規約 が優先です。
- 壁式/ラーメンで「抜けない壁」の出方がどう変わるか
- 直床/二重床で「水回り移動」「床上げ」がどう変わるか
- 梁(下がり天井)が暮らしと設備に“じわじわ効く”理由
- 遮音は「数字」より 規約→床構造→体感 が優先な理由
- 契約前に、仲介担当や管理会社へ聞くべき質問テンプレ
マンションは「構造」でできることが決まる
購入前の判断に効くのは、まずこの4つです。
- 壁式/ラーメン:撤去できない壁(耐力壁)の出方が変わる
- 直床/二重床:配管ルートと水回り移動の難易度が変わる
- 梁(下がり天井):天井高・収納・設備ルートに効く
- 遮音(規約+床構造+仕様):床材の選択肢が狭まることがある
ここで大事なのは、「どっちが良い悪い」ではありません。
自分のやりたいこと(間取り・キッチン移動・床材)に対して、制約がどこに出るかを先に知ることです。

壁式構造とラーメン構造|間取り変更の自由度が変わる

ざっくり言うと、建物を支える主役が違います。
- 壁式構造:壁(耐力壁)が建物を支える
- ラーメン構造:柱と梁が建物を支える
購入前に効く実務ポイントは、シンプルにこれです。
「撤去できない壁(耐力壁)がどこに出るか」
壁式構造で起きやすいこと
壁式は、壁が構造の主役なので、撤去できない壁(耐力壁)が出やすい傾向があります。
その結果、たとえばこんな希望が 壁の位置次第で叶いにくいことがあります。
- 一体感のあるLDKにしたい
- 居室をつなげたい/広げたい
- 廊下をなくして回遊動線にしたい
壁式っぽい物件を見たら
→ まず「抜けない壁(耐力壁)がどこか」を最優先で確認するのが安全です。
ラーメン構造で起きやすいこと
ラーメンは柱と梁で支えるため、間仕切り壁は変更しやすいケースが多く、間取りの自由度が上がりやすい傾向があります(※建物・図面条件によります)。
ただし、ラーメンでも 柱・梁は触れません。
室内に「柱型(出っ張り)」が出ることがあるので、家具配置や収納計画は現地で要確認です。
内見で見るポイント(ラーメン)
- 柱型が「どこに」「どれくらい」出ているか
- 冷蔵庫・食器棚・収納が置けるか(出っ張りが邪魔しないか)
- ベッドやソファのサイズが入るか(動線が確保できるか)
直床と二重床|水回り移動と“床上げ”の起こりやすさが変わる

リノベで一番お金と手間が動きやすいのが 水回り(キッチン・洗面・浴室)。
そして水回り移動を左右するのが 床のつくりです。
- 直床:床に給排水管を動かせる空間が少ないタイプがあり、水回り移動が難しくなりやすい
- 二重床(置き床):床下空間があり、給排水管が床スラブ上を通っている場合は移動しやすいことがある
※ここも「直床=不可能」「二重床=自由」ではありません。床下高さ・配管ルート・管理規約で変わります。
事例|対面キッチンで“床が一部上がる”のはなぜ?
対面キッチンにしたとき、床が一部だけ上がっている住戸を見かけることがあります。
これは多くの場合、排水の 「勾配(下り)」 と 配管スペースを確保するためです。
- キッチン移動の距離が伸びる
- 排水は「下り勾配」が必要
- 床下の高さに余裕が足りない
→ 床を一部上げて配管ルートを通す提案になりやすい
同じマンションでも床上げの有無が違う理由(よくある)
「同じマンションなのに、A住戸は床上げ/B住戸は床上げなし」
これはわりと起きます。理由はだいたい複合です。
- 住戸位置で 排水の立て管・配管ルート条件が違う
- 過去改修の有無(前オーナー工事)
- 施工会社の設計の組み立て(床上げ以外の逃がし方を提案できるか)
つまり「業者しだい」もゼロではないけれど、土台条件(床構造+配管ルート)の影響が大きいのが現実的な見方です。
梁(下がり天井)|圧迫感・収納・設備でじわじわ効く

梁(下がり天井)は、住んでから「地味に効く」代表です。
- 圧迫感(特に窓上/廊下/キッチン上)
- 吊戸棚・背の高い収納の高さ制限
- ダクトやエアコン配管ルートが限定される
ここは理屈より、写真で残すのが一番強いです。
撮るならこの3点
- 梁がどこに・どれくらい出ているか(窓上/廊下/キッチン上)
- 天井高の体感が伝わる“引きの写真”
- 冷蔵庫・食器棚・収納の予定位置と梁の関係が分かる角度
スラブ厚と遮音|数字だけで決めない(規約が最優先)
スラブ厚(床のコンクリートの厚み)は、音に関係する要素のひとつです。
ただし遮音は、スラブ厚だけで決まりません。床構造・仕上げ・部屋条件など複数要素が絡みます。
そしてマンションで最重要なのがここです。
遮音は「法律でスラブ厚が決まる」ではなく、
マンションごとの管理規約・使用細則で“床材条件”が決まることがある
国交省のマンション標準管理規約(コメント)でも、遮音上の問題が見込まれる場合に、管理組合がフローリング等の承認条件として「遮音等級○L○○以上」等を定める例が示されています。
LL/LHとΔLはどう読む?(購入前の最小限)
購入前に使うなら“ざっくり”この理解でOKです。
- LL/LH(空間の等級の目安):数字が小さいほど性能が高い(目安)
- ΔL(床材単体の等級):数字が大きいほど低減性能が高い(目安)
ただし最優先は 管理規約の指定(指定があれば従う)です。
ここで音の話をするのは、遮音が「床構造(直床/二重床)」「スラブ」「規約指定」に直結して、構造の影響が暮らしに出やすい代表例だからです。
音の具体的なチェック(テレビ音・外音・掲示板など)は別記事にまとめます。
私の体験談|音は“人×建物×状況”で変わる
以前、新築賃貸に住んでいたとき、階下の方から「音がうるさい」と言われ、管理会社立ち会いで確認したことがあります。こちらが原因とは特定できませんでした。
そのとき管理会社からは「響き方の影響で、どこで音がしているか分かりにくいことがある」という説明もありました。
私はそこまでうるさいとは感じませんでしたが、音の感じ方は本当に人それぞれ。
だから私は、遮音は「スラブ厚の数字」より先に、規約(遮音指定)→床構造→現地の体感の順で確認するのが安心だと思っています。
宅建士メモ|「構造・床」で後悔を減らす実務チェック
ここからは、宅建士の実務として「買主さんがあとで困りにくい」ための確認ポイントです。
1)契約前は“書面の中身”で固める(重要事項説明の位置づけ)
売買では、契約前に重要事項説明(宅建業法35条)が行われます。
マンションは管理情報が重要なので、実務では管理会社発行の「管理に係る重要事項調査報告書」を取得して説明する運用が広く行われています(ガイドラインもあります)。
構造・床の話と直結するのは、特にここです。
- 管理規約・使用細則:床材(遮音等級)・工事申請・工事可能時間・禁止事項
- 既存のリフォーム履歴や制限:共用部に影響する工事の取り扱い など
2)「どの資料で確認するか」を指定すると判断が速い
販売図面(間取り図)だけでは、耐力壁や床構造が読み取りにくいことがあります。
仲介担当へは、次のように“資料の種類”を指定して確認すると進みやすいです。
- 「撤去できない壁(耐力壁)が分かる資料はありますか?」
- 「床構造(直床/二重床)や配管の通り方が分かる資料はありますか?」
- 「可能なら 設備図(給排水) や 構造図 を確認できますか?」
3)“やりたいこと”を短く書くと、可否確認の精度が上がる
購入前に、次の3点だけ箇条書きにしておくと確認が具体化します。
- やりたいこと:例)対面キッチン/床材変更/間仕切り撤去
- 避けたいこと:例)床上げは最小限/圧迫感は避けたい
- 優先順位:例)①キッチン移動 ②床材 ③収納
4)区分所有法の基本|共同生活を壊す行為はNG(ルールの土台)
区分所有法では、区分所有者は「共同の利益に反する行為」をしてはならない、という基本があります。
遮音や工事ルールが規約で定められているのは、突き詰めると「共同生活を保つ」ため。だからこそ、構造・床を語る記事でも 規約確認が最優先になります。
買う前にやること3つ
最後に、購入前の動きを3つに絞ります。
1)まず「構造タイプ」を確認する(壁式/ラーメン、直床/二重床)
仲介担当や管理会社に、次の質問が効きます。
- 「構造は 壁式 ですか? ラーメン ですか?」
- 「床は 直床 ですか? 二重床 ですか?」
- 「撤去できない壁(耐力壁)が分かる資料はありますか?」
水回り移動を考えるなら、あわせて
- 「給排水管はどこを通っていますか?(床内で回せる条件ですか?)」
も聞けると早いです。
2)「梁」と「天井高」を写真に残す(あとで効く)
- 窓上/廊下/キッチン上を見上げて撮る
- 天井の圧迫感が分かる“引きの写真”を1枚残す
- 冷蔵庫・食器棚・収納の置き場予定と梁をセットで写す
3)遮音は「規約→床構造→体感」の順に確認する
- 「フローリングの遮音等級の指定(例:○L○○以上等)はありますか?」
- 「床材の表示がΔLなら、ΔLL/ΔLHはいくつですか?」
- 「窓を開けた時/閉めた時の外音はどう感じますか?」

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次に読むおすすめ記事
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リノベ前でも住み替えでも中古マンション内見チェックリスト【決定版】

▶ 次に読むなら:配管(排水勾配・PS・床上げ判断)
中古マンションの配管チェック(準備中)
参考リンク
■ 国土交通省(マンション標準管理規約:遮音等級の承認条件例など)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001965185.pdf
■ GBRC(日本建築総合試験所:ΔL等級の考え方/数字が大きいほど低減性能が高い)
https://www.gbrc.or.jp/test_research/acoustic/sound02/
(参考PDF)
https://www.gbrc.or.jp/assets/documents/lab/sound03_01.pdf
■ DAIKEN(LL/LHの基本:数値が小さいほど性能が高い)
https://www.daiken.jp/buildingmaterials/sound/soundproofflooring/
■ 三井のリフォーム(直床=床スラブ貫通配管構造/二重床と水回り移動の考え方)
https://www.mitsui-reform.com/column/topics1/page1-45/
https://www.mitsui-reform.com/column/topics1/page1-33/
■ e-Gov(法令)
宅地建物取引業法(重要事項説明:35条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
建物の区分所有等に関する法律(共同の利益に反する行為など)
https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
■ マンション管理業協会(管理に係る重要事項調査報告書:ガイドライン)
https://www.kanrikyo.or.jp/report/pdf/gyoumu/29-274_1gyoumu.pdf
