管理組合と管理会社の違い|中古マンション購入前に知っておきたいポイント【理事長経験者が解説】
中古マンションを検討するとき、間取り・立地・日当たり・価格はしっかり見るのに、「管理」の部分は後回しになりがちです。でも実は、マンションは“部屋だけ”を買うのではありません。管理の仕組み(お金の使い道・修繕の方針・ルールの作り方)まで含めて引き継ぐ買い物です。
そして一番大切な前提があります。
マンションを買う=管理組合の一員になるということ。共用部分やお金の使い道を、所有者同士で話し合い、合意して決めていく立場になります。管理は助け合いであり、同時に責任でもあります。
この記事の結論:管理会社は“実務の担当”。決めるのは管理組合。マンション購入は共同管理のスタートです。
この記事では、理事長経験をもとに、管理の全体像を
管理組合=意思決定する側/管理会社=実務を担う側
として整理します。外部オーナー(不在区分所有者)・賃借人の立場、中古購入前に議事録で確認したいポイント、さらに「管理組合が訴えられることもある」という現実にも触れて、気軽に買わず、納得して選ぶための判断材料をまとめます。
違いは管理組合は「意思決定」管理会社は「実務」

マンション管理は、役割が大きく2つに分かれます。
- 管理組合:意思決定する側
方針・予算・契約・大きな変更(工事や規約変更など)を決める主体 - 管理会社:実務を担う側
清掃・点検・会計など、契約に基づいて実務を実施する受託者
「管理会社が全部決める」と思われがちですが、**最終判断は管理組合(総会)**です。管理会社は専門家として提案や資料作成、実務の手配・報告などを行いますが、決定権者ではありません。
管理会社は「実務を担う受託者」。予算・契約・修繕方針などの最終判断は、管理組合(総会の決議)で行います。
国交省 マンション標準管理委託契約書(管理業務の委託)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001760188.pdf
マンションを買う=管理組合の一員になる(管理は助け合い)
マンションは戸建てのように「自分だけ」で管理できません。廊下・外壁・屋上・配管・エレベーターなどの共用部分があり、敷地(土地)も持分で共有していることが多いからです。
だからマンション購入は、住まいの購入であると同時に、
共同で維持する仕組みに参加することでもあります。
- 目先の快適さ(便利なサービス、設備)
- 将来の費用(修繕積立金、値上げ、一時金の可能性)
- 住み心地(ルール、トラブル対応)
- 資産価値(管理状態の良し悪し)
これらはすべて、管理組合の合意形成と意思決定に影響されます。助け合いだからこそ、無関心でいるほど「あとで大変になる」こともある。ここがマンション購入のリアルだと感じています。
管理組合とは(意思決定する側)|買った瞬間から当事者

管理組合は、マンションの区分所有者(部屋の所有者)で構成される団体です。管理組合が決めるテーマは、たとえば次のようなものです。
- 予算・決算(管理費等の使い道)
- 修繕の方針(大規模修繕・設備更新など)
- 規約・使用細則の変更
- 管理会社との契約(委託内容・費用)
- 共用部分の使い方(駐車場・駐輪場・防犯など)
総会・理事会・監事の役割をやさしく整理
総会(最高意思決定機関)
総会は、管理組合の最高意思決定の場です。
予算・契約・規約変更・大きな工事など、重要事項は総会決議で決まります。
区分所有法では、管理者は少なくとも年1回、集会(通常総会)を開くことが義務づけられています。
e-Gov 区分所有法(集会の招集)
https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
理事会(執行機関)
理事会は、総会で決まった方針にもとづいて、日常的な管理運営を具体的に進める役割です。管理会社との連絡・確認、個別案件の取りまとめ、提案準備などを担います。
監事(チェック役)
監事は「管理会社側」ではなく、管理組合側のチェック役です。会計や運営が適切かどうかを監査し、総会に報告する役割があります。
管理会社とは(実務を担う側)|委託契約で専門業務を任せる

管理会社は、管理組合と管理委託契約を結び、契約範囲で実務を担当します。たとえば、
- 清掃・点検の手配
- 会計業務(管理費・修繕積立金の収納、支出、報告)
- 総会・理事会資料の作成補助、議事録作成補助
- 管理員業務(形態による)
- 問い合わせ一次対応 など
重要なのは、管理会社は実務を担う受託者であり、意思決定の主体ではないという点です。
実際にあった話!サービスの廃止も導入も、総会で決まる
例① コンシェルジュが“高いから廃止”になった話
職場の先輩から聞いた話ですが、新築マンションでも、総会で「コンシェルジュ費用が高い」という議題が上がり、過半数の賛成で廃止になったことがあるそうです。
便利な面があっても、費用負担の感じ方は住民によって違います。サービスは固定ではなく、所有者の合意(総会)で変わり得るのです。
例② 私が理事長のとき、住戸Wi-Fi導入を提案して承認された話
私は理事長のときに、各住戸で使えるWi-Fiレンタル導入を提案しました。総会で業者さんに見積・説明をしてもらい、1世帯あたりの負担が小さいことを数字で示したことで賛同が得られて承認されました。
その際、賃貸募集のときに「Wi-Fi無料」はメリットとして伝えやすい点もプレゼンで触れました。管理組合は、単に削るだけでなく、暮らしの価値を高める意思決定もできます。
管理組合が訴えられることもある?
トラブルが起きたとき、最後に困るのは“住んでいる人”だけではなく、“所有者”です。管理組合は当事者として責任を問われることもあります。
実際に起きやすいトラブルの類型(3つ)
- 共用部分の不具合(漏水など)→損害賠償の争いになる可能性
- 総会決議をめぐる争い(決め方・内容が強引)
- お金のトラブル(着服・不正)
共用部分の不具合(漏水など)は、管理組合が対応主体になります。修繕判断が遅れると生活だけでなく資産価値にも影響するため、修繕計画の確認は大切です。
裁判所 最高裁判決(共用部分の管理責任に関する事例)
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-95402.pdf
外部オーナーと賃借人|議決権の違いを整理
外部オーナー(不在区分所有者)
外部オーナーは、部屋の所有者だが住んでいない人(賃貸に出している/転勤で貸している/投資保有など)です。区分所有者なので、議決権があります。出席できない場合も、委任状や議決権行使書で意思表示する運用が一般的です(詳細は規約・細則で確認)。
外部オーナー(不在所有者)も区分所有者なので議決権があります。出席できない場合は、委任状や議決権行使書で意思表示するのが一般的です。
e-Gov 区分所有法(集会・区分所有者の扱い)https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
賃借人(賃貸入居者)
賃借人は所有者ではないため、議決権はありません。ただし、規約・使用細則の対象(守る側)であり、生活に影響する議題では状況により意見を述べる場面があります。
管理組合よくある勘違いFAQ
A. いいえ
全部委託でも、管理組合は意思決定の主体です。
管理会社は委託された範囲の実務を担当しますが、予算・契約・修繕方針・規約変更などは管理組合(総会)の決議が必要になるのが一般的です。
A. 進められません。
日常の軽微な判断は理事長・理事会で進むこともありますが、金額が大きい支出、契約変更、ルール変更、工事などは規約にもとづき総会決議が必要になります。迷ったら「規約」「過去の議事録」「管理会社の説明資料」で確認するのが安全です。
A. 多くのマンションで年1回の通常総会を開きます。
決算・予算・役員選任などを扱うためです。
臨時総会は、たとえば次のような重要事項を決める必要があるときに開かれます。
- 大規模修繕の方針・業者選定
- 大きな設備更新
- 管理会社の変更
- 規約・使用細則の改定 など
A. できます。ただし準備が必要です。
変更は「総会決議」と「比較検討」が鍵になります。更新時期・解約条項の確認→複数社比較→理事会で整理→総会で承認、という流れが一般的です。「難しい」というより、合意形成に必要な資料をそろえるのが大変というイメージが近いです。
A. 管理会社は窓口にはなっても、万能な解決役ではありません。
注意喚起や掲示、理事会への報告は行いますが、最終的にどう対応するかは、規約・細則と管理組合の判断が関わります。ルールが整っているマンションほど、対応がスムーズです。
A. ありません。
議決権を持つのは、原則として「区分所有者(=部屋の所有者)」です。
A. そんなことはありません。大きく2つあります。
① 生活に直接影響する議題なら、総会で「意見を述べる」ことができる
賃借人は、議題について利害関係がある場合、総会に出席して意見を述べることができる旨が区分所有法に定められています(※意見は言えても、投票はできません)。
② ルールの対象になる(=規約や使用細則を守る義務がある)
賃借人は「占有者」として、共用部や敷地の使い方について、規約や総会決議に基づくルールを守る立場です。標準管理規約でも、区分所有者が第三者(賃借人など)に規約・使用細則を守らせる趣旨が示されています。
賃借人は議決権はありませんが、利害関係がある議題なら総会で意見を述べられる扱いがあります(※投票は不可)。
e-Gov 区分所有法(占有者の意見陳述)https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
中古マンション購入前は「議事録」で現状把握が鉄則

中古マンションは、部屋の状態だけでなく、管理の雰囲気(合意形成の文化)を一緒に引き継ぐ買い物です。議事録にはそれが率直に出ます。
購入前に最低限ここだけ(3点)
- 直近1〜2年分の議事録
- 長期修繕計画(更新されているか/内容が現実的か)
- 滞納状況(件数・金額・対応方針)
中古マンションの判断は「室内」だけでなく「管理の状態」も重要です。議事録・長期修繕計画・滞納状況は、購入前に確認したい資料です。
国交省 長期修繕計画作成ガイドライン等 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf
議事録でチェックしたいポイント
- 管理費・修繕積立金の値上げ議論(理由と金額)
- 大規模修繕の進捗(見積比較、説明会、設計事務所の関与など)
- 住民トラブル(騒音・ペット・駐輪等)が頻出していないか
- 管理会社への不満/変更検討の有無
- 総会の成立状況(成立ギリギリ、委任状が多い等)
2026年に法改正が施行されます
区分所有法等の改正が進められており、2026年4月1日施行と案内されています(詳細は参考リンク参照)。実務的には、外部オーナーであっても議決権が消えるわけではなく、意思表示(出席・委任状・議決権行使書等)をしないと意思決定に反映されにくくなる方向だと理解しておくと安全です(最終的には規約と施行後運用で確認)。
マンション購入は「部屋+管理」を選ぶこと
マンションを買うということは、部屋の所有者になると同時に、管理組合の一員として共用部分やお金の使い道を「みんなで話し合って決めていく」立場になることです。管理は助け合いであり、同時に責任でもあります。
修繕の先送り、意思決定の混乱、お金のトラブルが起きれば、住み心地だけでなく資産価値にも影響します。だからこそ、中古マンション購入前は、価格や内装だけで判断せず、議事録・長期修繕計画・滞納状況などから管理の実態を確認して、納得して選ぶことが大切です。
参考資料
■ e-Gov法令検索:建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)
https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
■ 国土交通省:マンション標準管理委託契約書(PDF)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001760188.pdf
■ 国土交通省:マンション標準管理規約(PDF)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001965185.pdf
■ 国土交通省:長期修繕計画作成ガイドライン等(PDF)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf
■ 最高裁判決(共用部分の管理責任に関する事例)PDF
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-95402.pdf
■ 法務省:区分所有法等の改正(施行日等)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00375.html
■ 法務省(PDF):改正法の概要資料
https://www.moj.go.jp/content/001440982.pdf
